コンタクトの重要な内容
私は2004年に国際医学雑誌に、ベンゾジアゼピン、チエノジアゼピン系の抗不安薬や睡眠導入薬が、眼験けいれんという病気の発症因子になることを発表しました。
発表当時、朝日新聞など一部のメディアでも報道されましたが、世間では「眼険けいれん」の重大性があまりわからないので、反響はごく限られたものでした。医師でさえ認識が非常に乏しく、それゆえ私どもの論文やそれに関する報道に目が行かないのです。
それを示すように、ある内科の先生は、私の眼臓けいれんの患者さんに、「視力はいいのでしょう。それなら眼がピクピクしたり、瞬きが多くなるぐらい大したことはないじゃないですか。
睡眠をきちんととった方がいいので、薬は続けてください」と言ったそうです。既に指摘したように、そもそも「眼がピクピクする病気」と捉えていることが、もうすでに間違っているのです。
実際、こうした抗不安薬や睡眠導入薬(以下ベンゾジアゼピン系薬とします)は、精神科、心療内科、神経内科以外の、街の内科医や整形外科医などでも、しばしば「軽い薬」と称して日常的に処方されています。私の調べでは、日本人の成人の少なく見積もっても、これらの薬が処方されているとにらんでいます。
この種の薬において「軽い薬」という場合は、作用の時間が短いことの言い換えが多いのです。やや専門的な話ですが「軽い薬」のからくりを知るのに重要なことなので、少しだけ薬理学の話をします。
ベンゾジアゼピン系薬は、神経細胞のうち、ギャバ(GABA)と呼ばれる神経伝達物質に応答する細胞に作用します。その細胞は、細胞が活動するためのふたつの受容体(カギ穴)を持っています。
ひとつはギャバそのものがカギになるカギ穴(ギャバ穴としましょう)、もうひとつはベンゾジアゼピン系薬がカギになるカギ穴(ベンゾ穴としましょう)です。ギャバという神経伝達物質が別の神経末端から出てくると、ギャバ穴を持つ細胞は活動します。
これが活動すると、神経全体を鎮静させる方向の抑制作用が起こります。ベンゾジアゼピン系薬がそこに来ると、今度はベンゾ穴に入りますが、この作用はギャバの作用を効率化させます。
ですから、ベンゾジアゼピン系薬はギャバの活動を支援する形になり、神経全体の活動は鎮静の方向に向かうと考えてよいでしょう。さて、「軽い」と言われる薬は、カギがカギ穴に入ってもすぐに出て行ってしまって、作用が長く続かないと考えれば良いのです。
ところがカギ穴はいつもカギが入ってくることを待っているので、作用が短いほどまたカギが欲しくなります。それが依存性です。
依存性があるから、なかなか薬がやめられなくなるのです。しかも、カギが何回もカギ穴に入ることにより、カギ穴が緩くなったり、変形したりする可能性もあります。
それが、薬理学的にも問題になっています。ところで、このベンゾジアゼピン系薬を飲んでいる人の中に、「眼がぼやける」「ものがかすむ」「眼に異常を感じる」などさまざまな表現で、眼や視覚の症状を訴える人が少なからずいます。
ギャバ神経が働くと、不安を抑えたり、眠気を誘ったりするだけでなく、いろいろな神経回路にも影響を及ぼします。視覚系や調節系(ピントを合わせる神経回路)にももちろん働きます。
しかし、これらベンゾジアゼピン系薬の添付書類を見ると、あっさりと「目のかすみ」とか「眼の症状」と書いてあるだけで、その内容や、重症度、頻度には触れていません。要するに眼の症状には関心がなく、調査もしていないのです。
ところが、患者さんにしてみれば、「眼がぼやける」「ものがかすむ」「眼に異常を感ずる」が薬のためとは思いもよりませんし、仮に処方している医師に言っても薬にそのような副作用はないとか、先の内科医のように、「眼は見えているからいいだろう」で終わってしまいます。中には、そんなことを言う医者はどこのどいつだと、怒鳴りつけられたという話を聞いたのも、1回や2回ではありません。
眼臓けいれんの実態をよく知らなければ、こういう反応も仕方ないのかもしれませんが、私は医師が患者さんの病気だけではなく、症状に対してもっと敏感な受容体を持つべきだと考えています。私は「M」の中で、眼がしょぼしょぼして辛い思いをしている女性が私の外来へ来た話に触れています。
この方の症状は4年近く連用している抗不安薬のせいに違いないと私は疑い、患者さんも頑張って、ついにこれをやめることに成功しました。その結果、眼の症状は改善し、彼女は「頭も3年若返った気がする」と喜んだのでした。
抗不安薬、睡眠導入薬は、うまく使われれば非常に効果的で有用な薬剤だと思います。その人の眼や視覚に関する不調が、日々の生活に差し障りが生ずるほど大きいのに、眼科に行っても「異常ない」「心配ない」「大したことない」「単なる疲れ」「気のせい」「気にしすぎ」と片付けられている例は、臨床の現場ではよくあることです。
そして、なぜこういう症状が出るのかと医師に説明を求めると、冬での場合はとりあえまだまだある誤診されやすい病気しかし、一部の方であれ、眼のさまざまな不快な症状を出すことも事実です。処方している医師は、そうした眼の症状がその人にとって生活の質にどれだけマイナスの影響をおよぼしているか把握すべきです。
不安や不眠を薬で軽減するどころか、むしろ逆に助長しているかもしれないことを、知るべきだと思います。眼科以外の医師は、眼は門外漢だからと言うでしょうが、患者の立場から言えば、それは大いに怠慢だということになるでしょう。
「眼精疲労」「ドライアイ」「結膜炎」などと手近で、頻度の高い病名をつけられて点眼を処方されるかもしれません。それでも納得がいかないと食い下がると、眼科の範晴でないから、心療内科、精神科にでも行きなさいと言われてしまうのです。
そういう対応に納得のゆかない患者さんの一部は、私の掲げている「神経眼科」や「心療眼科」をネットなどで見つけて、何とかならないかと受診してこられます。眼験けいれんと同様に、一般眼科医に見落とされがちなものがまだまだあります。
ここでは、その代表格について列挙して述べてゆくことにします。近視については本文の「近視の多くはなぜ子供の時にはじまるのか」でも解説しましたが、ここで今一度見ておきたいと思います。
強度近視は日本人に多い「異常」で、いろいろ不都合が発生する割に、注目度が低いのです。強度近視の定義は研究などによりまちまちです。
一般にその人の屈折(矯正に必要なレンズ度数)がマイナス5ないし6ディオプターより強いものとして定義されます。あるいは眼球の長さ(眼軸)が正常なら0.5m程度ですが、強度近視と定義することもあります。
すでに述べたように、そのような強度近視は日本人では6〜8%に見られ、各種の調査によりますと、これは白人の3倍以上の頻度です。このような強度近視は、いくつかの遺黄斑部(網膜中心の最も感度の良い部分)に脆弱な新生血管が出現したり、変性(網膜自体が構造変化を起こしてしまうこと)が生じて視力が低下してしまう近視性黄斑変性もしばしば合併します。
そこに雛や膜(黄斑上膜)や裂孔(黄斑円孔)が形成されるなどの病変もよく起こります。また、白内障や緑内障が合併しやすかったり、視神経乳頭やその周囲が変形します。
遺伝子が関連して成立しているもので、遺伝子外因子(環境因子)の関与はあっても、通常の近視にくらべて比較的少ないものと推定できますから、遺伝的人種差と考えられるのです。ちなみに、他のアジア人も日本人と同等かそれ以上に強度近視の頻度が高いことが、シンガポール、台湾などの調査で出ています。
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発表当時、朝日新聞など一部のメディアでも報道されましたが、世間では「眼険けいれん」の重大性があまりわからないので、反響はごく限られたものでした。医師でさえ認識が非常に乏しく、それゆえ私どもの論文やそれに関する報道に目が行かないのです。
それを示すように、ある内科の先生は、私の眼臓けいれんの患者さんに、「視力はいいのでしょう。それなら眼がピクピクしたり、瞬きが多くなるぐらい大したことはないじゃないですか。
睡眠をきちんととった方がいいので、薬は続けてください」と言ったそうです。既に指摘したように、そもそも「眼がピクピクする病気」と捉えていることが、もうすでに間違っているのです。
実際、こうした抗不安薬や睡眠導入薬(以下ベンゾジアゼピン系薬とします)は、精神科、心療内科、神経内科以外の、街の内科医や整形外科医などでも、しばしば「軽い薬」と称して日常的に処方されています。私の調べでは、日本人の成人の少なく見積もっても、これらの薬が処方されているとにらんでいます。
この種の薬において「軽い薬」という場合は、作用の時間が短いことの言い換えが多いのです。やや専門的な話ですが「軽い薬」のからくりを知るのに重要なことなので、少しだけ薬理学の話をします。
ベンゾジアゼピン系薬は、神経細胞のうち、ギャバ(GABA)と呼ばれる神経伝達物質に応答する細胞に作用します。その細胞は、細胞が活動するためのふたつの受容体(カギ穴)を持っています。
ひとつはギャバそのものがカギになるカギ穴(ギャバ穴としましょう)、もうひとつはベンゾジアゼピン系薬がカギになるカギ穴(ベンゾ穴としましょう)です。ギャバという神経伝達物質が別の神経末端から出てくると、ギャバ穴を持つ細胞は活動します。
これが活動すると、神経全体を鎮静させる方向の抑制作用が起こります。ベンゾジアゼピン系薬がそこに来ると、今度はベンゾ穴に入りますが、この作用はギャバの作用を効率化させます。
ですから、ベンゾジアゼピン系薬はギャバの活動を支援する形になり、神経全体の活動は鎮静の方向に向かうと考えてよいでしょう。さて、「軽い」と言われる薬は、カギがカギ穴に入ってもすぐに出て行ってしまって、作用が長く続かないと考えれば良いのです。
ところがカギ穴はいつもカギが入ってくることを待っているので、作用が短いほどまたカギが欲しくなります。それが依存性です。
依存性があるから、なかなか薬がやめられなくなるのです。しかも、カギが何回もカギ穴に入ることにより、カギ穴が緩くなったり、変形したりする可能性もあります。
それが、薬理学的にも問題になっています。ところで、このベンゾジアゼピン系薬を飲んでいる人の中に、「眼がぼやける」「ものがかすむ」「眼に異常を感じる」などさまざまな表現で、眼や視覚の症状を訴える人が少なからずいます。
ギャバ神経が働くと、不安を抑えたり、眠気を誘ったりするだけでなく、いろいろな神経回路にも影響を及ぼします。視覚系や調節系(ピントを合わせる神経回路)にももちろん働きます。
しかし、これらベンゾジアゼピン系薬の添付書類を見ると、あっさりと「目のかすみ」とか「眼の症状」と書いてあるだけで、その内容や、重症度、頻度には触れていません。要するに眼の症状には関心がなく、調査もしていないのです。
ところが、患者さんにしてみれば、「眼がぼやける」「ものがかすむ」「眼に異常を感ずる」が薬のためとは思いもよりませんし、仮に処方している医師に言っても薬にそのような副作用はないとか、先の内科医のように、「眼は見えているからいいだろう」で終わってしまいます。中には、そんなことを言う医者はどこのどいつだと、怒鳴りつけられたという話を聞いたのも、1回や2回ではありません。
眼臓けいれんの実態をよく知らなければ、こういう反応も仕方ないのかもしれませんが、私は医師が患者さんの病気だけではなく、症状に対してもっと敏感な受容体を持つべきだと考えています。私は「M」の中で、眼がしょぼしょぼして辛い思いをしている女性が私の外来へ来た話に触れています。
この方の症状は4年近く連用している抗不安薬のせいに違いないと私は疑い、患者さんも頑張って、ついにこれをやめることに成功しました。その結果、眼の症状は改善し、彼女は「頭も3年若返った気がする」と喜んだのでした。
抗不安薬、睡眠導入薬は、うまく使われれば非常に効果的で有用な薬剤だと思います。その人の眼や視覚に関する不調が、日々の生活に差し障りが生ずるほど大きいのに、眼科に行っても「異常ない」「心配ない」「大したことない」「単なる疲れ」「気のせい」「気にしすぎ」と片付けられている例は、臨床の現場ではよくあることです。
そして、なぜこういう症状が出るのかと医師に説明を求めると、冬での場合はとりあえまだまだある誤診されやすい病気しかし、一部の方であれ、眼のさまざまな不快な症状を出すことも事実です。処方している医師は、そうした眼の症状がその人にとって生活の質にどれだけマイナスの影響をおよぼしているか把握すべきです。
不安や不眠を薬で軽減するどころか、むしろ逆に助長しているかもしれないことを、知るべきだと思います。眼科以外の医師は、眼は門外漢だからと言うでしょうが、患者の立場から言えば、それは大いに怠慢だということになるでしょう。
「眼精疲労」「ドライアイ」「結膜炎」などと手近で、頻度の高い病名をつけられて点眼を処方されるかもしれません。それでも納得がいかないと食い下がると、眼科の範晴でないから、心療内科、精神科にでも行きなさいと言われてしまうのです。
そういう対応に納得のゆかない患者さんの一部は、私の掲げている「神経眼科」や「心療眼科」をネットなどで見つけて、何とかならないかと受診してこられます。眼験けいれんと同様に、一般眼科医に見落とされがちなものがまだまだあります。
ここでは、その代表格について列挙して述べてゆくことにします。近視については本文の「近視の多くはなぜ子供の時にはじまるのか」でも解説しましたが、ここで今一度見ておきたいと思います。
強度近視は日本人に多い「異常」で、いろいろ不都合が発生する割に、注目度が低いのです。強度近視の定義は研究などによりまちまちです。
一般にその人の屈折(矯正に必要なレンズ度数)がマイナス5ないし6ディオプターより強いものとして定義されます。あるいは眼球の長さ(眼軸)が正常なら0.5m程度ですが、強度近視と定義することもあります。
すでに述べたように、そのような強度近視は日本人では6〜8%に見られ、各種の調査によりますと、これは白人の3倍以上の頻度です。このような強度近視は、いくつかの遺黄斑部(網膜中心の最も感度の良い部分)に脆弱な新生血管が出現したり、変性(網膜自体が構造変化を起こしてしまうこと)が生じて視力が低下してしまう近視性黄斑変性もしばしば合併します。
そこに雛や膜(黄斑上膜)や裂孔(黄斑円孔)が形成されるなどの病変もよく起こります。また、白内障や緑内障が合併しやすかったり、視神経乳頭やその周囲が変形します。
遺伝子が関連して成立しているもので、遺伝子外因子(環境因子)の関与はあっても、通常の近視にくらべて比較的少ないものと推定できますから、遺伝的人種差と考えられるのです。ちなみに、他のアジア人も日本人と同等かそれ以上に強度近視の頻度が高いことが、シンガポール、台湾などの調査で出ています。
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